流域内の降雪・積雪・融雪を表現するために、本研究者らは降雪の標高分布特性を利用した分布型融雪モデルを開発し、ある程度流域内の積雪分布の再現に成功したが、本研究では、高い空間分解能で無雪期と積雪期の地表面高さ、そして広域積雪深を計測し、モデルの検証を行い、積雪水量とともに融雪流出量を高精度に予測できるシステムの開発を目指す。 まず、計測に関しては、航空機搭載レーザープロファイラー(LP)の積雪深計測性能の検証実験と精度検証を行った。そして、広域積雪深データを分析し、広域積雪分布特性と地形量との関係を調査し、後述の分布型融雪流出モデルから得られる積雪水当量との比較を行った。そして、航空機計測を行い、積雪の粘弾性圧縮を採り入れた一次元積雪融雪モデルを組み入れた総合的な分布型融雪流出モデルから得られる積雪深との比較検討を行った。 山地流域の水収支を把握するために、分布型融雪流出モデルに入力する降水量に対する補正を総合的に行い、降水量の補正の必要性を示し、冬期の降水量が大幅に過小評価されている事を明らかにした。また、標高による降雪量補正の必要性も示された。航空機搭載LPの積雪深計測データとモデル計算積雪深との比較により、降水量に対して、雨量計補正と標高補正を行うことにより、積雪深分布を平均的に再現できる事が示された。しかし、モデルが尾根線付近では積雪深を過大評価、谷筋付近では過小評価している事も分かった。 最後に可搬型LPを用いた地上定点観測を行い、主要観測イベントによる斜面降雪深分布の計測を試みた。計測範囲の狭さもあるかも知れないが、有意な差が見られませんでした。百数十メートルの斜面レベルでは降雪分布の顕著な差は見られず、更に広範囲での計測が必要であること、吹雪や雪崩などによる積雪の空間再分布も考慮すべき重要な要素であることを明らかになった。
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