研究分担者 |
平野 廣和 中央大学, 総合政策学部, 教授 (80256023)
藤吉 康志 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (40142749)
太田 幸雄 北海道大学, 大学院工学研究科, 教授 (00100058)
大石 哲 山梨大学, 大学院医学工学総合研究部, 助教授 (30252521)
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研究概要 |
雲物理実験は廃坑になった鉱山内の面積約15m^2,高さ約430mの立坑を用いた.立坑の下部(以降坑底)から雲の核となる溶液を噴霧し,一方で上部(以降坑頂)から大型ファンで坑内に上昇風速を発生・変化させることにより,人工的に雲を生成し,各高度の粒子数濃度,気温,坑頂において粒子数濃度,雲水量を計測している.噴霧する粒子の化学組成は,主に雲核として陸上起源で代表的なエアロゾルである硫酸アンモニウム((NH_4)_2SO_4)を噴霧した.噴霧粒子の粒形分布は直径50nm以上で70-80nmにピークを持つ.上昇風速・溶液噴霧量を変えることによって異なる大気の状態を想定して観測を行っている.2006年度は、各高度に観測機材を設置し定点観測するのに加え、観測機材を鉛直方向に移動させる事により、より詳細な鉛直構造に対する計測ができ,以下のことが明らかになった. 1.立坑内に溶液を噴霧すると,低高度において小粒径の粒子数濃度が増加することから,雲核となる微粒子が増加し,水蒸気フラックスが一定な場における雲粒成長の抑制を観測した. 2.坑頂付近における粒子数濃度変化において,粒径が20μm以上の雲粒が減少していることから,本実験での雲粒成長の限界がこの粒径付近に存在すると考えられる. 3.粒子数濃度から算出した雲水体積濃度において,高度に伴い雲水が増加し,粒子数濃度と雲水体積濃度の関係は線形関係である. 4.本実験における凝結粒子の臨界半径が存在し,過飽和度に伴い成長する粒子と,蒸発し小粒径に変化していく粒子が存在し,高度上昇に伴い粒径が小さい雲粒と粒径の大きい雲粒が一様に増加する. これらの定量的な成果は,雲の微物理過程をモデリングする際の初期条件・境界条件を与える段階で用いることで,より実現象に近いモデルの構築に役立てている.
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