研究課題
基盤研究(B)
高解像度気候変動シミュレーションのアウトプットを元に、全球スケール、大陸流域スケールなどのマルチスケールにおいて、地球温暖化下の洪水・渇水の変動の見込みを推定することが、本研究の目的である。全球スケールにおいては、観測降水量と気温をベースにした20世紀過去100年の洪水・渇水再現計算と、そのような観測値を用いない20世紀気候再現実験からの洪水・渇水の計算結果とを比較することによって過去再現性を検証するとともに、予測を信頼するならば21世紀はインドシナ、サヘル、西ヨーロッパなどで渇水・洪水ともに酷くなることを示してきた。さらに、そのような将来変化に関して、モンテカルロシミュレーション手法を用いての統計的妥当性の検証も行った。その結果、2030年前後などの近未来では有意性はそれほどではないが、21世紀終盤の洪水渇水変動は十分な有意性を有することが示された。ガンベル分布に当て嵌まると仮定するならば、00年に一度程度の洪水が10-20年前後に一度生ずる地域も多くなる。また、これまでの結果で洪水の増加などが示されていたサハラ地域では、モンテカルロの結果として有意性が棄却された。これも妥当な結果であるといえる。これらの成果は論文にまとめ、IPCCの水の章の座長であるクンゼビッチ教授に推薦され彼の主催する国際誌に投稿し、受理された。大陸流域スケールとしては、黄河を対象として過去の検証を行った。その結果、1990年代の黄河の断流(を引き起こした流量減少)のうち半分弱程度は当時の気候の変動に起因することが分かった。これより、たとえ人為的な取水量が現在レベルで推移したとしても、将来の気候変化次第では再び断流が生じる可能性があることが示唆される。こちらも論文投稿が受理された。これらの論文の執筆と受理までのやりとりが最終年度の主たる成果であった。
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