研究課題
基盤研究(B)
本研究では、底質の輸送現象を調べるための手段として、微生物群集構造を利用することの可能性について検討した。有明海と東京湾から試料を得たが、主に有明海について検討を深めた。平成17年度・18年度には有明海の底質を23地点から採取し、そこに存在するβ Proteobacteriaに属するアンモニア酸化細菌を対象として、T-RFLP法により解析を行った。その結果、筑後川下流から湾内左回りに分布しているクラスターや、また、湾央に行くに従って増えるクラスターが見られた。筑後川から流入する淡水は湾内を左回りに進むといわれており、それと一致する結果が得られた。平成19年度には、さらに有明海筑後川河口域の7地点から、底質試料、および、底質直上水を1地点につき経時的に5試料を同一日に採取し、それらの細菌群集構造を解析した。その際、少量の試料から簡便にDNAを抽出し、PCR法に供するための処理法として、超音波分散・希釈法を開発した。その結果、ほとんどの試料からPCR産物を得ることができた。また、遠心分離により集めた懸濁物質についても、超音波分散法によりDNAを得てPCR法を行なうことができた。短時間での水中の細菌群集の変化を追跡するため、全細菌の16SrRNA遺伝子を対象としてPCR-T-RFLP法を適用した。懸濁物質試料からのPCR産物については、同一地点でも時間帯によって変動するフラグメントがいくつか見られ、その挙動は潮の流れに関連があると見られた。しかしその関連は必ずしも明瞭とは言いがたく、当初掲げた目標である底質輸送のトレーサーとして細菌群集構造を用いようとした場合、全細菌を対象とするよりも、特定の細菌群に焦点を絞った方がよいように考えられた。底質の輸送を把握するための一つの手段として、細菌群集構造を用いる手法を提案することができた。
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