研究概要 |
日本のメガシティでは,大気汚染物質の排出量に対する規制が大きく進み工業センターからの寄与大変に減った。しかしながら,民生用エネルギー需要の伸び,さらに単体規制の急激な進展にもかかわらず,乗用車数の増加等によって沿道や都市内過密部の大気汚染は浮遊粒子状物質,二酸化窒素を宙心に金も深刻である。一方,中国等のメガシティにおいては,都市の急激な巨大化に伴う交通インフラ整備の遅れ等により,より深刻な問題を抱えている。また,中国北部の都市に対しては年間のある時期に黄砂という自然の大気汚染ソースがバックグラウンドとして存在する。このような異なる条件のメガジティに対して,人為排出源の制御シナリオに基づく大気汚染の将来予測とそれによる健康リスク評価,さらに,健康リスクと排出源制御に関する相対的な経済評価を提示できるシステムモデルの研究が必要であると考えられる。本研究は,中国,日本のメガシティを対象として,上記システムの開発を行うことを目的とする。平成19年度は,17〜18年度に続き,以下のことを行った。(1)化学輸送モデル等の整備とシミュレーション:申請者らが継続的に研究してきた化学輸送モデルをベースにメガシティ(名古屋,北京)の環境予測用に改変・整備し,日本中部を対象に化学輸送計算を行った。注目する物質は,SPM,二酸化窒素(NO2),オキシダント(Ox),である。オキシダント,有機炭素粒子,硫酸塩,硝酸塩は反応生成物質でありモデルはこれらを生成する一次物質も含む。(2)年間平均の濃度場の推定のための3次元流れ場を得るために,メソスケール気象モデル(MM5)により2001年1年間の流れ場を,本年度は昆明を含む中国南西部について整備した。(3)エネルギー消費機器データベースと拝出量推計モデルの構築:都市における大気汚染物質発生量を,技術と経済をべースとしたエンドユースモデルによって求める基礎を確立した。このエンドユースモデルでは,まず対象の都市部に必要となるサービス量を外生的に与え,生産部門運輸部門あるいは民生部門が最も経済効率の高い技術(エネルギー消費機器)を選択すると仮定して最適化計算によりその技術を定め,その技術を稼動するために必要なエネルギー量を計算し,さらにエネルギーの消費に伴い発生する大気汚染物質を計算するものである。(4)大気汚染と健康リスクに関する評価:昨年度,名古屋について,大気環境常時監視局データおよび人口密度分布等のデータを収集し,双方の分布図作成,大気汚染暴露による自殺・事故死を除く至死亡に対する影響を推定したが,本年度は,さらに,データを精査し大気汚染に強く関係すると考えられる心臓および呼吸器系疾患による年間死亡率SPM濃度、気温,NO2濃度,平均年齢の関係について,重回帰分析を行った。SPM濃度が年間死亡率に与える影響を定量的に推定する方法を提案した。、その結果,PM10濃度の年平均値を10μg/m3下げることにより,10万人当りの年間死亡数が約8.8人減らせると推定された。この数字を欧米の研究と比較して評価した。
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