研究概要 |
ダム貯水池で採取し長期間にわたり好気と嫌気の両条件下に維持し続けた底泥と直上水からなる底泥カラムを用いて,天然女性ホルモンの消長挙動を検討した.まず,E2をカラム内に直接添加し,直上水中におけるE2とその剛次生成物であるElの消長挙動を好気と嫌気の条件で比較・検討した.さらに,共存有機物の影響を評価するため,生物易分解性有機物を代替する物質としてよく用いられるグルコースをE2と同時に濃度を変えて添加した実験を行った.平行して実施する回分実験の結果との比較も行った.その結果を底泥カラム実験で得たものを中心に以下に示す. (1)好気条件下と嫌気条件下におけるE2の消失速度を比較すると,好気条件の方が消失速度は大きい. (2)嫌気条件下においては,Elの挙動に見た目上の消長停止が確認された.また,栄養となる共存有機物が多く存在する程,Elの消失速度は遅くなると考察した.これは,底泥微生物がE1の分解よりもグルコースの分解を優先させたことに起因することと推測した.これに対し,グルコース添加量のE2の消失速度に及ぼす影響は小さく,底泥微生物の活性がグルコースの流入により向上されたことが示唆された. (3)好気条件下においては,共存有機物が多く存在する程,E2とその副次生成物であるE1の分解速度が遅くなると考察した.これは,天然女性ホルモンの分解よりもグルコースの分解を優先させたことに起因するものと推測した. また,滞留時間を反映できるように,底泥カラムに貯水池から採取した水を一定流量で連続的に通水させ,水相でのE2の分解挙動やE1の挙動を確認する予備実験も実施した.好気カラムにおいてはE1が,嫌気カラムにおいてはE1とE2が定常状態になる様子が観察された.
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