研究概要 |
長良川本川3地点と支川7地点の計10地点における河川水中の浮遊微生物と河床堆積物付着微生物の密度を評価するとともに、易分解性物質の代表であるグルコースと天然女性ホルモンの17βエストラジオール(E2)に対する分解速度を求め、分解速度と微生物密度との関係を調べた。また、底泥を充填したカラムに、E2とE1を添加した長良川水を連絡的に通水させ、E2とE1の消長挙動に対する対象物質濃度、滞留時間、好気と嫌気の影響を検討すると共に、吸着・拡散・生分解などの機構を考慮した完全混合流れモデルによる数値解析を通じて、対象物質の消長挙動に対する吸着と生分解の寄与を評価した。得た主な知見を以下に示す。 (1)長良川水系浮遊微生物の密度は一般細菌と従属栄養細菌ともに、上流域から下流域にかけて大きくなるが、河床生息微生物の密度は、調査地点による差異が水相に比べて小さい。 (2)微生物密度の季節的依存性については,特に長良川上流域のほうで顕著に現れ,夏から冬にかけて浮遊微生物密度が減少する。 (3)E2に対する単位微生物密度当たりの分解速度係数の値は逆川・境川・荒田川・新美濃橋・南濃大橋・糸貫川・津保川・栗巣川・叺谷・伊自良川の順で大きくなった。これに対し、河床生息微生物における同物質の単位微生物密度当たりの分解速度係数は逆川・栗巣川・境川・新美濃橋・津保川・糸貫川・叺谷・荒田川・伊自良川・南濃大橋の順で大きくなり,河川によって微生物の活性が大いに異なっている。 (4)底泥と直上水からなる底泥充填カラムにおける、流入水中のE2とE1の消長を吸着、拡散、生分解を考慮した完全混合流れモデルにより記述した。実験結果は同モデルより精度よく再現された。 (5)嫌気条件に比べて、好気条件の方が底泥充填カラムの直上水中におけるE2とE1の消失が早く、その速度の差は、吸着ではなく、生分解速度の差異が大いに寄与したと判断された。
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