本研究は、メソ気象モデルとマイクロLESモデルを、両者の特長を活かしながら融合し、地表近傍での強風に対して変動風速まで含めて推定できる数理モデルを構築することを目的としている。特に、台風通過時の地表近傍での風速の時間変化を実際に推定し、観測値との比較に基づきモデルを改良して精度を向上する。さらに本モデルを用いて人間の生活圏である地表近傍の強風の実勢を明らかにし、建築物に被害をもたらす機構を明らかにしようとするものである。 平成19年度は、これまでに開発、さらには精度検証されたメソ気象とマイクロLESの融合モデルの適用範囲の拡充をめざし、また環境あるいは防災問題の解決の視点から、地表近傍での実際の風の強さ(強風実勢)を把握した。 (1)小規模気象擾乱に基づく局所的暴風の融合解析 小規模気象擾乱による突発性強風による被害調査データを踏まえた上で、こういった特殊な局所的暴風による建築物に対する風外乱の特性を推定する。被害調査結果から得られた被害発生場所を対象にまず、GPVデータを用いた台風来襲時のメソ気象モデルによる解析を実施した。さらに、そこから得られたメソスケールでの気象データに基づき、不安定大気現象あるいは小規模気象擾乱に対してLES乱流解析を実施した。その上で、こういった特殊な局所的暴風による建築物に対する風外乱作用の特性を推定した。 (2)地表近傍における強風の実勢の把握 実際の都市域あるいは地域を対象に融合モデルによる解析から、地表近傍での強風を求め、その地域特有の風況評価を行った。また、局所的な影響を受けた乱流構造まで含めて強風特性を明らかにし、人間の生活圏における強風の実勢を詳細に把握し、建築物などの強風災害が生じる要因を解明した。
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