研究概要 |
本年度はRC造柱のせん断破壊後の軸力保持性能のメカニズムを把握するための実験を行った。実験は鉄筋コンクリート造シリーズと鉄骨鉄筋コンクリート造シリーズの2シリーズ行った。以下にはRC造シリーズの結果を示す。 RC造せん断破壊柱を対象に軸力保持能力喪失時の水平部材角の評価法を配筋詳細の影響に着目して検討してきた。その結果,中心軸圧縮加力実験の結果と軸力保持能力喪失部材角に関係があることを報告した。本実験では,既往の研究に対して,パラメータを広い範囲で試験体を作成することを試みた。具体的には,i)配筋詳細の悪い古い建物を念頭においた低強度コンクリートを用いる,ii)昨年の研究では試験体は断面(180mm×180mm)に対して帯筋径(D6)が若干大きかったので,より現実的な比率となる帯筋径(D4)を用いる,およびiii)中子筋を用いた場合,の3点である。 実験結果を以下に示す。 (1)軸力が同じで,帯筋が異なる場合,中子有の軸力保持能力喪失部材角は最も大きかったが,帯筋間隔の影響は無かった。また,配筋詳細が異なる2体を比較しても,差は観察されなかった。この点については,コンクリート強度と寸法効果の観点からの検討が今後必要である。 (2)せん断強度に及ぼす配筋詳細の影響は観察されなかった。 (3)軸力保持能力喪失部材角実験値と対応する軸圧縮試験体の滑り開始時摩擦軸力実験値Pfrに対する等価軸力eNの比には,昨年の研究と同様に相関があったが,今回の試験体はやや安全側に評価される試験体もあった。 (4)昨年までの実験による軸力保持能力喪失部材角評価式は今回の実験データを加えても評価式としては妥当であった。
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