研究課題
基盤研究(B)
鉄筋コンクリートは合理的な構造部材であると考えられてきたが、種々の劣化により鉄筋が発錆し耐力が低下する現象が顕在化しており、表層のコンクリート自体に高い耐久性および機能維持性が要求されている。また、環境面への対応も重要な課題である。このような、機能維持、環境適用性に関して、従来の無機的な材料から構成されるコンクリートには限界があり、たとえば古来より地球環境に適応している生物・植物が、その空隙構造と細胞質により温度維持機能、自己回復、加力に対する抵抗機能などを実現している点を多孔組織のコンクリートに組み込むことが有効と考えられる。本研究では、新たな有機的な構成組織を持つ次世代に向けた高機能コンクリートについて、従来の強度、剛性、耐ひび割れ抵抗性等の無機的な力学性能に加えて、有機物に見られるような、恒温機能(ヒートアイランド現象低減効果、植栽効果)、空気質変換機能(有害空気質低減作用)、表層部改質機能(超寿命作用)などの付与効果を検討した。その結果、(1)温度恒常性を付与したコンクリート系材料に関し、高吸水性樹脂含有の効果、植栽による効果を明らかにし、(2)空気質変換作用を付与したセメント系材料に関し、ホルムアルデヒド等の室内空気汚染物質の低減効果、地球温暖化の一因である炭酸ガス濃度の低減効果を明らかにし、(3)表層部の改質による長寿命化に関し、鉄筋腐食によるかぶり部分の評価および破壊抵抗性、表層部への繊維混入および磁力による配向効果などを明らかにした。これらの成果は、建築材料学の視点から学術的に価値があり、その意義は、環境共生材料として環境負荷の低減に結びつく点だけでなく、将来的にコンクリートの建築材料としての可能性も広げるものと考えられる。
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