研究概要 |
浮屋根式円筒液体貯槽を対象に,浮屋根と内部液体との連成作用を考慮した地震時スロッシング応答の解析解を線形ポテンシャル理論に基づいて導出し,浮屋根の形式(ダブルデッキ,シングルデッキ)や剛性・質量がスロッシング応答に及ぼす影響を理論的に検討した。さらに,次年度以降に計画されている模型振動実験に備えて,予備的な振動実験を実施して理論の検証を行った。研究結果から得られた知見は以下のように要約される。 1.浮屋根変位の1次固有周期は浮屋根の形式によらずほぼ一定で,自由液面の1次固有周期とほぼ一致する。ダブルデッキ型浮屋根の場合,2次以上の固有周期は浮屋根の剛性の増加とともに短くなるが,シングルデッキ型浮屋根では浮屋根の影響は小さく,各次の固有周期は自由液面の場合よりも僅かに長くなる程度である。 2.ダブルデッキ型浮屋根の場合,浮屋根はほぼ剛体的に変位し,浮屋根による拘束効果によって自由液面の場合よりもかなり小さな液面変位になる。シングルデッキ型浮屋根の場合は,浮屋根による拘束効果はきわめて小さく,ポンツーンの剛性にかかわらず自由液面に近い液面変位分布となる。 3.ダブルデッキ型浮屋根の場合,動液圧や曲げひずみは中心から半径の1/2付近で最大値をとる。断面の厚さが十分であれば,曲げひずみは通常の鋼材の降伏点ひずみを超えることはない。シングルデッキ型浮屋根では,動液圧分布は剛性の高いポンツーン部に集中し,デッキ部とポンツーン部との接続部に鋼材の降伏点ひずみに達する大きな曲げひずみが発生する。 4.以上の結果を踏まえると,2003年十勝沖地震で発生した浮屋根の沈没等のスロッシング被害を防止するためには,シングルデッキ型浮屋根をダブルデッキ型に改修することが望ましい。
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