研究課題
基盤研究(B)
本研究はビル間の「すき間」を都市再生のための資源として捉え、空間利用効率、耐震性、省エネルギー性、設備更新性等の向上に利用することの可能性を検討したものである。わが国に独特の都市「すき間」については、文献研究によってその起源を探り、実測調査によって実態を明らかにした。耐震性向上については、同様の構造・規模を持つ小規模老朽ビルの連結制震を主たる目標とし、実測調査地域に隣接して見出された昭和30年代建設のRC造小規模ビルをモデルに、最上階免震による耐震改修技術の有効性を検討した。その結果、ねじれ振動、応答を大幅に軽減することが出来ることが検証され、これまでは実現困難と考えられた連結効果がもたらされることが明らかとなった。省エネルギー性向上については、ビル間のすき間を塞ぐこと、またビル前面をダブルスキン化し、あるいは屋上面にもう1層の空間を増設することにより、実測対象街区全体でどの程度の省エネルギーが実現できるかを解析的に検討した。その結果、ビル間のすき間を塞ぐことによる冬季の省エネルギー効果がきわめて大きいことが明らかになった。すき間を利用した設備更新技術に関しては、既存ビルを傷めることなく簡便に設備を更新・増強するための吊りユニットを設計・試作・設備搭載実験をおこなった。10階程度のビル用に設計されたこのユニットは各階500kg程度の設備を搭載することが可能であり、狭小なすき間内で1日程度の工期で施手可能であることが実証された。また搭載実験により、老朽化した設備の更新増強・用途変更にともなう設備要求の変化に簡単に対応でき、また連結送水管の維持更新を容易にして地域の防災性を向上させるなど、さまざまな効果があることが示された。
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