研究概要 |
CO2排出量削減・廃棄物削減といったサスティナブルな社会の実現に向けて,住宅ストックの有効利用は重要な課題となる。その解決策として,建築物の躯体(スケルトン)を長期的に維持しつつ,内装(インフィル)のみをニーズに合わせて取替える,いわゆるSI方式による用途転換手法があげられるが,スケルトンとインフィルのインターフェースが整理されていないため,工事後の所有権の領域が曖昧になり,再用途転換や断続的な再投資を困難なものにしている。 この様な背景のもと,本研究ではインフィルを,家具や家電と同様に動産として扱えるならば,スケルトンとは独立した資産であると,より明確に主張できるため,キャッシュフローを生み出す「装置」になりうるという仮説のもと,その実現可能性を現行法規の調査や施工実験によって,動産化インフィルのありようを検討した。 インフィルの所有権に関しては,建物本体と建築設備との附合(民法242条)が争点となった過去の判例を調査することにより,所有者の異なる二個以上のモノの結合を判断する要件を抽出した。その結果,(1)物理的な結合(2)機能的な結合の二点を検討していることが分かったため,それらを技術的な要件としてとりまとめ,施工慣習や法規と照らしあわせ着脱型インフィルシステムを開発した。具体的には,二つの要件を満たすために,スケルトンに附合している配管,配管類とインフィルの接続点(コンセント)を明確化するインターフェース部品と,ユニット化された機能空間を組み合わせることにより実現した。 また,これらの取り組みを基にし,簡易用途転換型インフィルシステムを行うにあたり建築,設備計画上の留意事項をまとめた設計指針を作成した。
|