研究概要 |
研究の目的 近代の病院・病棟の平面構成は,患者と看護師との距離を如何に短縮するか,また看護師の拠点から病棟への出入り(動線)が如何に監視できるか,という主としてこの2つの点を同時に満たすべく検討が行われてきた。しかしここ数年,カルテの電子化が本格稼働し始めたことで,医療情報や患者情報が端末を介してやりとりされるようになり,看護業務においても,記録業務が発生源,すなわち患者のベッドサイドで行われ,また看護師間の情報交換も端末上で行われることになり,看護拠点そのものが役割を喪失し始めている。 本研究はこうした情報化の基で,1)これまでの看護業務から何がどう変わったのか,それに対応して,2)これまでの看護拠点の役割はどう変わったのか,またこれらを踏まえ,3)パーソナルな看護拠点(ワゴン等)や共有の看護拠点がそれぞれどのように位置づけられ,利用されるべきかを検討し,看護師が集まる場としての看護拠点は解体し得るか,について検討するものである。 本年度は,以下のように調査研究を進め,現在昨年度の結果と合わせ,分析中である。 1)昨年度に引き続き,下記のように,看護拠点の違い(集中→分散→パーソナル・消滅)と看護動線・看護内容に視点を絞り,看護拠点と患者(病室)の位置関係・看護動線・内容の関係を明らかにしてきた。 2)調査は,昨年度同様,看護師が行った業務内容・その場所・携帯物品・会話などを交わした相手・患者への直接看護,について,内科系・外科系の一般病棟における,看護師全員分の終日・24時間のデータを収録した。 3)調査の対象は,榊原記念病院(東京)で実施した。他に,香川県立中央病院など,電子カルテ導入を前後する医療施設と調査実施に向けて交渉したが,実施時期の問題などで折り合いが付かず断念した。 なお,榊原記念病院については,電子カルテが導入され,またそれに対する建築的対応がなされている施設である。
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