1全国の空き家活用の先進事例調査を行った。自治体による空き家改修の補助制度、移住者のための空き家確保など新しい試みを行う地域は多いが、総じて課題の解決にまでは至っていない。 2地域情報を蓄積できるWeb上の空間情報データベース(MohAシステム)を構築した。これにより、将来の空き家利用者や地域住民の情報共有がより円滑に行われることが期待される。 3空き家の現地調査および所有者への調査を行い、空き家管理の実態および所有者における今後の空き家に対する意向を把握した。空き家の貸出物件を確保する上での問題点を明らかにするとともに、活用を視野に入れた今後の適切な空き家の管理のあり方を提示した。 4空き家利用者に、山梨県早川町M集落にある空き家に実際住みながら、日誌により、集落住民との付き合いの実態を継続的に記録した。居住実験および補足のヒアリング調査により、都市部のような管理業務を担う者の支援がなく、利用者自身で諸問題を解決しているなど、利用者側の課題が明らかとなった。また、空き家所有者と利用者には、自身が所有または利用する住居とその周辺における、公的空間と私的空間の境界のあり方に対して、意識の相違があることが明らかとなった。 限界集落が増加し、空き家の利用が日本各地の中山間地域で課題となっている中、本研究は、社会実験により「空き家所有者」「空き家利用者」「地域社会」「中間支援組織」という多様な主体や、主体間における課題を抽出した意義は大きい。さらに、研究を進めていく過程で、研究対象とした早川町において、「地域社会」では、移住者を以前より積極的に受け入れる、「中間支援組織」では、「空き家のデータベース化」「空き家を利用した移住者のお試し暮らし」という空き家に関する調査や施策を始めるなどの動きが見られ、本研究の成果が、社会に還元され、空間の「所有」から「利用」への価値転換を促したという点は極めて重要である。
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