研究課題
「研究の目的」全国各地に所在する近世に建設された霊廟建築は、各地の装飾的な近世寺社建築の建設に多大な影響を及ぼしたと考えられる。ところが、霊廟建築に関する既往研究は、幕府が直接関与した主要建築などに限定されており、全国各地の霊廟建築を対象とした研究、さらにはその装飾意匠面からの専門的研究は遅れている。そこで、全国各地の霊廟建築を対象として、その構造・意匠面ならびに装飾技法面からの調査研究を行い、近世における装飾建築の荘厳に関わる設計理論・手法を明らかにして、当時の建築文化の実像を究明することが本研究の目的である。「本年度の研究実施内容」文化庁編集等の指定文化財建造物目録、既往論文等により霊廟建築を抽出し、その建築情報のデータ化を行った。この作業は次年度も引き続き実施する。一方、福島県相馬市ならびに名古屋市所在の計8棟の霊廟建築について現地調査を実施した。調査では改造箇所の確認、ならびに現在見られる建物意匠が建立当初のものであるか否かについての詳細観察を実施し、各建築の建立当初の建築意匠の内容を把握した。歴史的建築遺構の実像把握は、以上の調査手法により初めて可能となる。次年度以降もこの点を重視し、各地に残る霊廟建築の建立当初の姿を的確に把握する。このほか、研究対象建築の意匠的特質や建築技法を究明するための基礎資料とするため、各時代、各種建築の意匠に関する写真等の資料を一部収集し、その画像データを作成した。