研究課題
「研究の目的」全国各地に所在する近世に建設された霊廟建築は、各地の装飾的な近世寺社建築の建設に多大な影響を及ぼしたと考えられる。ところが、霊廟建築に関する既往研究は、幕府が直接関与した主要建築などに限定されており、全国各地の霊廟建築を対象とした研究、さらにはその装飾意匠面からの専門的研究は遅れている。そこで、全国各地の霊廟建築を対象とした構造・意匠面ならびに装飾技法面からの建築調査などを行い、霊廟建築における荘厳に関わる設計理論・手法を明らかにすることが本研究の目的である。「本年度の研究実施内容」本研究では指定文化財建造物目録、既往研究等により全国の霊廟建築の所在を確認して、順次現地調査を行うとともに、関連する文献調査を実施している。まず、現地調査として宮城県所在の仙台東照宮、陽徳院霊屋、円通院霊屋、愛知県所在の源敬公廟、鳥取県所在の樗谿神社(旧鳥取東照宮)など4件の霊廟、計12棟の建築調査を実施し、構造、意匠に関する建築情報を把握した。一方、近世の文献調査から当時普及し、現在では忘れ去られていると考えられるいくつかの塗装仕様を把握しつつあり、その実体を確認するため、日光東照宮、善光寺(長野)、歓喜院聖天堂(埼玉)など計7棟の建築の現地調査を実施するとともに、飾金具の事例調査として、名古屋市および前田育徳会所蔵の金具調査を実施した。また、日光建築の造営文書の一部データ化を実施した。