研究課題
本研究は、各地の霊廟建築を対象とした構造・意匠・装飾技法面の建築調査・研究から、霊廟建築の荘厳に関わる設計理論・手法を明らかにし、当時の建築文化の実像を究明することを目的としている。調査研究は4年計画で進めており、本年度はその3年度目にあたる。実施に当たり、指定文化財建造物目録、既往研究等により全国の霊廟建築の所在を確認して、順次現地調査を行うとともに、関連する文献調査を行っている。本年度実施した現地調査は、埼玉県川越市所在の仙波東照宮、東京都台東区所在の上野東照宮、和歌山県高野町所在の徳川家霊台など計4件の霊廟建築で、各物件とも本殿、幣殿、拝殿、唐門ほかについて、建築構造形式、彫刻、飾金具、塗装などの各分野を本研究参加者で分担して調査し、それぞれの技術情報等を収集した。以上の調査を行う中で、一つの問題が明らかとなった。各建築が文化財修理等により過去に複数回の修理を受け、建築当初の姿の実体を把握することが困難になりつつある点である。そのため、観察時は調査対象物の成立年代差の判定を可能の限り行う点に注意した。修理報告書の刊行があるものについては、これも参照しつつ調査していることは言うまでもない。これまでの調査研究により、複合社殿形式(権現造り)と分棟型社殿形式との形式差の間にどのような建築上の荘厳手法差が存在するかなど、現在調査結果を分析・整理しているところである。一方、昨年度までの文献調査等から、荘厳手法の中心をなす塗装技法について、今日への技術伝承が途絶えていると考えられる技法の存在を把握しつつある。これらの技法の普及度合いを知るために、上記現地調査中において在来塗装の状況観察に注意した。この中で、油性塗料の存在については、文献で確認した長野県所在の善光寺本堂のほか、同技法の採用の可能性が考えられたやはり善光寺の三門などの現地調査を実施し、文献と実際との照合を試みた。三門塗装片に関してはこの材料分析を実施した結果、黒漆塗である可能性が指摘できた。次年度は本研究の最終年度に当たる。
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すべて 雑誌論文 (2件)
文化財建造物保存技術協会編『重要文化財善光寺三門修理工事報告書』
ページ: 4
竹中大工道具館編・発行『錺 建築装飾に見る金工技法』
ページ: 12-17