研究概要 |
擬ギャップ系においてフェルミ準位を巧みに制御して優れた熱電特性が発現することを明らかにするために,Fe_2VAlにおける置換元素のサイト選択性を考慮して第四元素で部分置換した擬二元合金について,ゼーベック係数と電気抵抗の温度依存性を系統的に測定した.さらに,熱伝導率の測定も行い,新しい熱電材料としての可能性を追究した結果,以下の知見を得た. 1.Fe_2V(Al_<1-x>Ge_x)およびFe_2V(Al_<1-x>Si_x)を比較した結果,いずれも置換によって電気抵抗が急激に減少すると同時にゼーベック係数は-130μV/Kまで増大した.またホール効果の測定によって多数キャリアはホールであり,ゼーベック係数の符号と対応することを確認した. 2.上記合金について室温の熱伝導度について元素置換効果を評価した結果,Ge置換合金の方が低減効果が大きいことがわかった.電子濃度効果の観点からゼーベック係数および電気伝導度に対しては置換元素の種類にはよらないが,格子熱伝導度については原子量の大きい元素で置換するほど大幅に低減することを明らかにした. 3.Fe_2VAlにおけるサイト選択性を考慮して作製した擬二元合金(Fe_<1-x>M_x)_2VAl(M=Rh,Ir,Pt)について熱電特性を系統的に調べた.とくにM=Ir,Ptで置換すると,ゼーベック係数が最大で-140μV/Kまで増大し,さらに重い元素のために熱伝導率も大きく減少することがわかった. 4.遷移元素で置換した合金のゼーベック係数について,置換元素の合金組成の代わりに価電子濃度で整理した場合,置換元素の種類によらずユニバーサルな関係が得られた.さらに,軟X線光電子分光実験により元素置換した合金の電子構造を精査して擬ギャップ構造と熱電特性の関連性を検討し,ゼーベック係数と電気伝導度に対する電子濃度効果を検証した.
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