研究概要 |
擬ギャップ系においてフェルミ準位を巧みに制御して優れた熱電特性が発現することを明らかにするために,Fe_2VAlにおける置換元素のサイト選択性を考慮して第四元素で部分置換した擬二元合金について,ゼーベック係数と電気抵抗の温度依存性を系統的に測定した。さらに,熱伝導率の測定も行い,新しい熱電材料としての可能性を追究した結果,以下の知見を得た。 1.Fe_2VAl_<1-x>Ge_xについて,剛体バンドモデルを仮定してバンド計算から評価したゼーベック係数は実測値と定性的には一致するが定量的には一致しない。光電子分光測定により電子構造を評価した結果,x=0〜0.05では予測と比較的良く一致するが,x=0.10ではフェルミ準位近傍で大きく変化することによると考えられる。熱電特性の組成依存は電子構造変化で定性的に説明できる。 2.Fe_2VAl_<1-x>Ge_x及びFe_2VAl_<1-x>Si_xについて,格子熱伝導度の逆数1/κ_<ph>は原子質量因子(ΔM/M)^2に比例して変化しており,置換元素の種類によらずユニバーサルな関係があることが分かった。 3.Fe_2VAlにおけるサイト選択性を考慮して作製した擬二元合金(Fe_<1-x>Re_x)_2VAlについて熱電特性を系統的に調べた。Reで置換すると,ゼーベック係数の符号は正で最大で90μV/Kまで増大しており,Ti置換合金を上回った。さらにRe置換とMn置換を比較した結果,Reの方が重い元素のために熱伝導率も大幅に減少することが分かった。 4.総価電子数24(平均電子濃度e/a=6)のホイスラー化合物Fe_<2-x>Co_xTiAlについて,バンド計算およびゼーベック係数と電気抵抗率の測定によって,フェルミ準位にギャップまたは擬ギャップの形成を確認した。非化学量論組成の合金についてゼーベック係数の符号はx=1付近で正から負に変化するが,実験値は計算値を下回った。ゼーベック係数の増大のためには規則度の向上が課題である。
|