研究概要 |
新しい無機材料プロセッシングの構築を目的として、マイクロ波照射による非平衡反応下でのナノ・メソスケール構造体を形成し、選択加熱系における熱的非平衡反応メカニズムの解明、非平衡反応下におけるナノ・メソスケール構造体の形成機構、格子欠陥導入による電気的,磁気的,光学的物性制御手法の検討を行った。TiO_2-SnO_2二成分系では、マイクロ波吸収の強いSnO_2成分の選択加熱により、マクロからミクロに至る微細構造組織形成が認められた。マクロには単一試料内における昇華・析出反応により、組成や密度が傾斜した組織が得られたとともに、ミクロスケールでは一方向拡散による非平衡固溶体相の形成、スピノーダル分解によるナノ積層組織形成が起こり、従来の反応場では得られない非平衡組織が形成されることを見出した。マイクロ波吸収特性の大きく異なる二成分間において、微視的な温度勾配の発生が通常の平衡条件下とは異なる拡散様式を誘引し、平衡組織から逸脱したマクロ・ミクロ組織形成を引き起こすことを実証した。マイクロ波照射下では、単一試料内の昇華・析出反応によりSnO_2単結晶の生成も起こり、マイクロ波プロセス固有の格子欠陥生成が起こることを明らかにした。 マイクロ波吸収の異方性を利用して、磁気異方性を有するバリウムフェライト多結晶体の組織形成を試み、(00ι)配向度の高い多結晶体組織が高出力のマイクロ波照射により形成されることを見出した。圧力や強磁場を用いた従来の配向性多結晶体作製技術とは異なり、マイクロ波交番電磁界の作用と物性の異方性を利用した新たな組織形成技術として位置付けられる。
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