研究概要 |
新しい無機材料プロセッシングの構築を目的として、マイクロ波照射による非平衡反応下でナノ・メソスケール構造体を形成し、選択加熱系における熱的非平衡反応メカニズムの解明、非平衡反応下におけるナノ・メソスケール構造体の形成機構、格子・欠陥導入による電気的,磁気的,光学的物性制御手法の検討を行った。マイクロ波照射下での化学反応は、特定成分の選択加熱による微視領域での熱的非平衡反応としての特徴を有し、TiO_2-SnO_2系、Fe_3O_4-FeAl_2O_4固溶体のスピノーダル分解によるメゾスコピック組織形成が認められた。いずれも短時間のマイクロ波照射によって10〜30nmスケールに2相が積層したナノ組織の形成に成功した。電気炉加熱等の通常の化学反応では、スピノーダル分解による相分離組織形成には長時間の熱処理を要するが、マイクロ波照射下では微視領域での熱揺らぎにより固相拡散が促進され、極めて短い時間スケールでメゾスコピック組織の形成が可能となることを明らかにした。周波数の異なるマイクロ波を利用した材料プロセッシングを検討したところ、波長の長い2.45GHzのマイクロ波利用が有効であり、相分離の形成には物質内部へのマイクロ波侵入深さ(δ)が大きく影響することが明らかとなった。マイクロ波照射下での選択加熱は、基板上に形成された薄膜デバイスの結晶化にも有効であり、シリコン半導体基板上に形成されたPZT系誘電体薄膜の低温・短時間での結晶化も実現された。以上より、マイクロ波照射下の選択加熱の利用により、平衡組織から逸脱したマクロ・ミクロ組織形成が可能となることを実証した。
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