研究概要 |
本研究は、(1)4f^<n-1>5d^1準位を利用した量子カッティング発現と動的挙動、希土類ドナー/アクセプタ間のエネルギー伝達と配位圏構造相関の解明、新規量子カッティング発現(2)量子効率【greater than or equal】100%の真空紫外励起蛍光材料創製を目標とする。本年度は、配位圏内サイトの異なるフッ化物、酸化物に、励起とエネルギー伝達イオンとなる1種,2種の希土類Ln(I)^<3+>(ドナー)Ln(II)^<3+>(アクプタ)(Ln^<3+>=Er^<3+>, Tb^<3+>, Gd^<3+>, Eu^<3+>, Pr^<3+>)を共添加のスピン許容低スピン4f^<n-1>5d^1準位をもつ新規結晶合成、量子カッティングとアクセプタサイト相関の知見の取得、イオンの量子カッティングの動的挙動の解明を目的とした。 1.2種あるいは3種のLn(I)^<3+>-Gd^<3+>-Ln(II)^<3+>(Ln^<3+>=Eu^<3+>,Er^<3+>,Tb^<3+>,Pr^<3+>)希土類イオン結合系の新規フッ化物KLiGdF_5:Eu^<3+>,CsGd_2F_7:Er^<3+>,Tb^<3+>、ケイ酸塩SrY_4(SiO_4)_3O:Pr^<3+>結晶を合成した。2種イオン対系KLiGdF_5:Eu^<3+>では、4f-4f真空紫外励起で最大140%の交差緩和効率をもつ量子カッティングを見出し、量子カッテイング効率のEu^<3+>濃度依存を明らかにした。量子カッティング過程では、ドナー希土類(Gd^<3+>/Eu^<3+>)の最近接配位数(アクセプタサイト数)と濃度消光、原子間距離から、励起Gd^<3+>から第4近接Eu^<3+>へエネルギー移動する事を明らかにした。3種イオン組合せのCsGd_2F_7:Er^<3+>,Tb^<3+>では、Er^<3+>,Tb^<3+>の真空紫外の4f^<n-1>5d^1のスピン許容と禁制準位を決定し、Er^<3+>の4f^<11>-4f^<10>5d^1スピン許容準位への真空紫外4f-5d遷移励起で最大120%のダウンコンバージョン効率をもつ量子カッテイングを見出し、量子カッティング効率のEr^<3+>/Tb^<3+>の濃度比依存を明らかにした。SrY_4(SiO_4)_3O:Pr^<3+>,KLaF_4:Sm^<2+>では、低温で4f^n-4f^n励起で永続光ホールバーニング現象を見出し、各々2準位系、4f^6-4f^55d^1への熱的分布を経る光イオン化モデルで説明できることを明らかにした。 2.量子カッティングの動的挙動を調べるため、KLiGdF_5:Eu^<3+>で、真空紫外4f-4f励起および近紫外4f-4f励起での時間分解蛍光スペクトルおよび寿命測定より求めた、発光の立ち上がりと減衰から、交差緩和および格子間エネルギー移動の時間挙動を明らかにし、量子カッテイング過程が、真空紫外励起後、Eu^<3+>-Gd^<3+>の交換相互作用による交差緩和とGd^<3+>-Gd^<3+>の副格子間の共鳴エネルギー移動の2ステップエネルギー移動過程で起こることを実証した。以上より、量子カッティングと配位圏アクセプタサイト相関に基礎的な知見を得るとともに2種のイオン対の量子カッティングの動的挙動を明らかにし、そのメカニズムについて基礎的な知見を得た。
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