研究概要 |
本年度は、(1)真空紫外励起による量子カッティングの配位圏内構造相関とダイナミクスによるエネルギー伝達機構の解明、(2)高量子効率の真空紫外励起蛍光体の創製を目指し、希土類配位構造の異なるフッ化物中のイオン対R_1^<3+>-R_2^<3+>-R_3^<3+>、R_1^<3+>-R_2^<3+>系(R_1=Gd^<3+>,Tb^<3+>,R_2=Tb^<3+>,Eu^<3+>,R_3=Er^<3+>)の量子カッティングに関して以下の結果を得た。 [1]3種イオン対Er^<3+>-Gd^<3+>-Tb^<3+>系CsGd_2F_7:Er^<3+>,Tb^<3+>、CsGd_<2-x>Y_xF_7:Er^<3+>,Tb^<3+>では、4f-5d真空紫外励起で最大0.3の交差緩和効率をもつ量子カッティングを得、交差緩和効率はEr^<3+>/Tb^<3+>濃度に対し極大を示す事及び配位サイトのY固溶依存を明らかにした。1種イオン対Tb^<3+>-Tb^<3+>系、KGd_3F_<10>:Tb^<3+>、CsGd_2F_7:Tb^<3+>では、真空紫外と深紫外の2つ領域の4f-5d励起(157〜172nmと212nm)の量子カッティングの交差緩和効率の励起波長、Tb^<3+>濃度依存を明らかにした。また最近接希土類サイトの希土類アクセプタの置換確率を計算し、それに基づき交差緩和効率の濃度依存を明らかにした。 [2]量子カッティングのダイナミクスでは、CsGd_2F_7:Er^<3+>,Tb^<3+>で、真空紫外4f-5d励起及び近紫外4f-4f励起の2つの発光の時間分解スペクトルから発光減衰の動的挙動を調べ、発光の立ち上がり時間の差から、交差緩和および格子間エネルギー移動の挙動を明らかにし、量子カッティングが、Er^<3+>-Gd^<3+>の交差緩和とGd^<3+>-Tb^<3+>の副格子間のエネルギー移動の2ステップエネルギー移動過程で説明されること、一方、CsGd_2F_7:Tb^<3+>では、真空紫外と近紫外励起の発光の動的挙動から、量子カッティング過程は、Tb^<3+>-Tb^<3+>間の交差緩和とTb^<3+>又はGd^<3+>へのエネルギー移動によるダウンコンバージョン過程によることを実証した。 [3]超格子構造をもつAMgF_4(A=Sr^<2+>,Ba^<2+>)に希土類イオンCe^<3+>を添加した新規蛍光体を合成した。SrMgF_4:Ce^<3+>とBaMgF4:Ce^<3+>は、真空紫外域で複数の超格子構造に由来するCe^<3+>のバンドで励起によるレーザー発振が期待できる可能性を見出した。近紫外照射により着色し、これは局所的に生成した電子-正孔による色中心であり、新たな発光中心となることを見出した。KLaF_4:Sm^<2+>蛍光体で、低温でレーザー照射によるスペクトラルホールバーニング発現とその生成モデルを提案した。以上、合成した蛍光体の新規な分光特性、量子カッティングの配位構造相関、ダイナミクスとメカニズムを明らかにすると共に、幾つかの新規な高効率真空紫外励起蛍光体を見出した。
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