研究概要 |
本研究ではマルチフェロイック結晶を実用化するために、室温以下で磁性と強誘電性を示す物質群の探索に取り組んだ。まず物質系の選択として、強誘電体候補物質として六方晶ペロブスカイトh-BaTiO_3,立方晶ペロブスカイトc-BaTiO_3,六方晶系化合物PbVO_3を選択し、強磁性発現候補物質としてMn_2O_3,Fe_2O_3,Co_2O_3を選択した。これらの化合物は固相法で合成したものをフローティングゾーン法で単結晶化し、それらの磁性と誘電性を測定した。その結果、c-BaTiO_3-Co_2O_3,h-BaTiO_3-Fe_2O_3,およびh-BaTiO_3-CO_2O_3の系で室温付近で強磁性を示すことを確認した。これらの特徴は透明であり、かつ絶縁性を示しながら室温で強磁性を示すことであり、いわゆる希薄磁性体DMSとは異なる挙動を示すことが明らかになった。現在の課題は強磁性発現のメカニズム解明であり、酸素欠損、あるいはドーピングによって導入された電子キャリアーとの関連を調べることであり、もしキャリアーとの相関が無ければ、全く新しいタイプの磁性強誘電体系となると考えられる。そこで、誘電体中の磁性イオンの配位環境、価数について検討を行うため、EXAFSとXANESにより磁性イオンの価数と配位環境を調べた。その結果、これらの遷移金属イオンは6配位環境にあり、B-サイトのTiイオンの位置を占有することおよびドープ量に伴って価数が変化することを確かめた。
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