研究概要 |
(Pr1-xCax)MnO3(x=0.4,0.5)薄膜の超巨大磁気抵抗効果(CMR)は成長基板からの応力に著しい影響を受けることが報告されている。しかしながらこの領域では、斜方晶空間群Pbnmのa,b比は1に近く、そのため擬似立方晶a_p=0.385nmを基にした各種単結晶基板上でのエピ成長とそれに伴う結晶歪が議論できるが、相境界組成x=0.3では、a,b比が1に近似できなくなり、擬似立方晶を単斜晶として取り扱わねばならなくなる。それ故相境界組成では従来報告されている応力歪の発生と電子輸送特性とが大きく異なることが予想される。そこでSrTiO3(001)単結晶基板(以下STO)およびSi基板(111)配向Pt電極上にRFスパッタにより相境界組成(Pr1-xCax)MnO3(x=0.3)(以下PCMO)薄膜を成膜して、そのナノ構造を詳細に調べた。その結晶方位関係は従来報告のない<110><001>PCMO//<100><010>//STO、<001><110>PCMO//<100><010>STOであり、強誘電体ドメインと同様のナノ構造を形成することが解明された(Appl.Phys.Lett投稿中)。またCMR素子を実用的に作製する上で重要なSi基板(111)配向Pt電極においては、Pt(111)上の3つの基本結晶方位[-110][-1-12],[0-11][2-1-1],[10-1][-12-1]に規定されたPCMO(102),(100),(112)の3種類のエピ成長が確認され、成膜温度で配向比率が変化する。今後これらエピ成長膜の電子輸送特性を調べる予定である。 また、TiN上のTiO2膜でナノ秒オーダーの極性パルスにより40,000%の抵抗スイッチングを確認し、HR-TEMにより確認されたアナターゼ構造からモット転移による機構が推定されることを発表した(JJAP Exp.Lett)。
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