研究概要 |
高度情報化を促進しているユビキタス社会においてワイヤレス通信は様々な利用が広がり、重要となっている。電波資源の逼迫から使用周波数は、高周波数側へ広がっている。高周波化により高品質係数(高Q)低誘電率の材料が求められている。本研究の対象の珪酸塩は、低誘電率・高Qな特性が期待されている。これまで研究開発したものにフォルステライトがある。このものは、誘電率が6.7と小さく、高純度原料を用いることにより品質係数(Q・f)が270,000GHz得られており、ミリ波帯での誘電体として期待されている。Siイオンが四面体に配位し、共有結合性が50%に達し、動きにくいことが誘電率を小さくしている。それ故、本研究では珪酸塩に着目して研究を進めた。島状珪酸塩フォルステライト、ウイルマイト、複合型珪酸塩ディオプサイド、環状珪酸塩コーディエライトに関して研究を行い次の成果を得た。 ・フォルステライトのMgをCa、Mn、Niで置換した結果、イオン半径が小さいほど酸素八面体の対称性が高くなるため共振周波数の温度係数が0ppm/℃に近づくことを解明した。 ・ウイルマイトは誘電率6.6、品質係数219,000GHz、共振周波数の温度係数-61ppm/℃を示した。また、共振周波数の温度係数改善のためTiO_2を11wt%添加し、τ_f=1.0ppm/℃に改善することに成功した。なお、誘電率9.3、品質係数113,000GHzを示した。 ・ディオプサイドの合成において、1200℃において仮焼成を行った場合に、相対密度96.9%、品質係数121,400GHzを示し、密度と品質係数の改善に成功した。 ・コーディエライトのMgの一部のNiによる微量置換は品質係数の改善に有効であることが明らかとなり、誘電率6.14、品質係数99,110GHz、共振周波数の温度係数-32ppm/℃を示した。
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