研究課題
非鉛圧電材料の一つの候補として、近年、ビスマス層状構造強誘電体(BLSF)が精力的に研究されている。BLSFセラミックスは、従来のPZT系に比べて、種々の特長を有し、これらの特長を十分生かすことができれば、非鉛系圧電セラミックスとして、高温用および高周波用、あるいは、高安定性が要求される分野の圧電材料としての利用が期待される。しかしながら、BLSFの自発分極Psの取り得る向きはその結晶構造から2次元的に制限されているために、多結晶BLSFセラミックスの分極処理による圧電性の付与を効果的にするためには、単結晶のもっている異方性をなるべく損なうことなしに、単結晶の性質を極限まで引き出せるようなセラミックスの作製法としての粒子配向技術が要求されるわけである。本研究では、典型的なBLSFであるBi_4Ti_3_<12>(BIT)系のTi^<4+>サイトの一部をドナー系添加物であるNb^<5+>およびV^<5+>で置換したもの、高いTcをもつBi_3TiTaO_9(BTT)を主体とした系、ならびに、(Sr,Ca)Bi_4Ti_5O_<18>(SCBT)系などについて、粒子配向型圧電セラミックスを作製し、そのドメイン構造を制御して、圧電的諸特性に及ぼす粒子配向の効果を詳細に述べた。その結果、次のことが解った。1、Bi_4Ti_3O_<12>(BIT)系/NbおよびV添加は組成式Bi_4Ti_<3-x>Nb_x_<12>[BITN-x]およびBi_4Ti_<3-x>V_xO_<12>[BITV-x]による。抵抗率pは、BIT(x=0)では約10^<10>〜10^<11>Ωcmであるが、ドナーを添加したBITNとBITVでは約10^<13>-10^<14>Ωcmと2〜3桁程度上昇した。それに伴い、高温分極処理が可能となった。さらに配向させることで、ドメイン構造が制御でき、圧電特性は格段に向上した。2、Bi_3TiTaO_9(BTT)系/BLSFが示す特徴の一つである大きな機械的品質係数Qm(9000〜11000程度)は高いTcと大いに関連があることが示唆されている。BLSFの中で、非常に高いTb(>900℃)をもつBTTは潜在的に大きなQmをもつと期待されることから、Sr_<x-1>Bi_<4-x>Ti_<2-x>Ta_xO_9[SBTT2(x)](1≦x≦2)の組成式について圧電特性が調べられている。本年度は、BTT(x=1)のQmおよび結合係数kを調査した。3、Sr_2Bi_4Ti_5O_<18>-Ca_2Bi_4Ti_5O_<18>(SCBT)系/レゾネータ応用に対して重要な共振周波数温度係数TC-fは、Caの置換量が増加すると低下し、あるいは、粒子配向することにより小さくできる。粒子配向型BLSF圧電セラミックスは、普通焼成セラミックスと比較して、圧電特性は1.5〜2倍程度向上し、粒子配向に伴い温度特性も改善されることがわかった。
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