La(Fe_xSi_<1-x>)_<13>のキュリー温度T_C直上で出現する巨大磁気熱量効果をより低温域で得るためには、磁気体積効果や電子状態変化などを踏まえたT_Cの制御が不可欠である。(La_<1-z>R_z)(Fe_<0.88>Si_<0.12>)_<13>においてR=Ceの場合は、格子定数が約0.15%程度の顕著な収縮を示し、T_Cは173Kまで低下した。CeおよびPrの場合、T_Cの変化に差が生じたが、圧力効果測定より、Ce-Fe間の電子状態混成によるT_Cへの影響が重要であることがわかった。さらに、Mn、CrおよびNiによる部分置換を実施した結果、3d電子数の増減とT_Cの上昇下降が対応する傾向が見られた。これらを踏まえ複合部分置換した(La_<1-z>Ce_z)(Fe_<x-y>Mn_ySi_<1-x-y>)_<13>を作製した。この結果、MnおよびCe濃度を調整することで、T_Cは0〜180Kからまでに制御され、磁気熱量効果が保持されることが明らかになった。 さらに、断熱温度変化におよぼすエネルギー障壁の影響を調べた。全エントロピー一定の条件で断熱変化の熱力学的経路を検討し、約1J/kgのエネルギー障壁ΔE_bを乗り越えないと変化が阻害されることがわかった。そこで、メタ磁性転移履歴とΔE_bの関係に注目して、履歴による熱損失の低減のための方策を検討した結果、Fe低濃度領域でのCe部分置換により大幅な損失低減が達成された。 La(Fe_xSi_<1-x>)_<13>化合物は熱伝導特性などについても磁気冷凍サイクル構築に障害になるような問題は無いことが確認された。本化合物系は、安価なFeを主体とし、また、全ての構成元素が無毒である。したがって、これらの化合物は、実用に最も近い低温用磁気冷凍用磁性材料として有望であることが結論される。
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