材料の微細組織の変化は、複数の相がお互いに影響しあった総合的な結果として現れる。一方、金属材料学では、材料の不均質性を積極的に利用しその特性向上が図られてきた。本研究では、不均質材の組織の時間発展過程とその特性変化を求めることを目的として、複雑な階層組織を示す耐熱材料を対象として、そのミクロ組織の変化量を組織自由エネルギーで定量化し、それに基づき組織の時間発展を明らかにし、組織と強度の定量的関係を求めた。具体的には、階層構造組織の対象として主にニッケル基合金におけるガンマープライム相のラフト構造の形成とその崩壊の一連の組織変化過程をPhase-field法を用いてシミュレートし、クリープ強度との対応関係を調べた。その結果、クリープ初期に[001]方向に垂直に平板状に形成されたラフト構造は、時間とともにクリープひずみが増加するにともない、波状に変化し崩壊してゆくことが明らかとなった。これはひずみの蓄積にともなってeigenひずみの値が立方対称から正方対称に変化することによって、ラフトの安定面が(001)面から傾いた面で安定となるためである。一方、これら(001)面ラフト構造の安定性は合金のクリープ強度(寿命)特性と直接対応していることがわかった。さらに、ラフトの(001)面からの傾斜角により、クリープ中に蓄積されたひずみ量を逆算できる可能性も示唆された。クリープこのような階層組織の安定性と強度の関係はフェライト系耐熱鋼でも認められ、その安定性に対する合金元素の効果は一連の三成分系相互拡散係数から求めた交差相互拡散係数により明らかとなった。
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