炭化ケイ素(SiC)は高出力、高周波数、高温環境デバイス用の基板材料として注目されている。SiCの開発研究は主にポリタイプの4Hや6H単結晶について行われ、それらのパワーデバイスや高周波デバイスへの応用が計られてきた。一方、3C-SiCは金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)製造用基板として強い関心がもたれている。本研究では主に3C-SiC単結晶の微細構造解析を透過電子顕微鏡法(TEM)を用いて行った。欠陥の形成機構を明らかにし、さらに欠陥密度を低減させる方法の開発を目指した。TEM断面観察用試料は集束イオンビーム加工法によって作成した。 最近、約300pmの厚みの3C-SiCウェハーにおいて面欠陥を低減させる方法が開発された。[110]と[-1-10]方向にでこぼこを導入した「なみうちSi」基板上にSiCを成長させたのち、Si基板を研磨で取り除いている。Si基板を取り除く前の試料では、3C-SiC/Si(001)界面近傍で多くの面欠陥が観察された。それらは積層欠陥、インバージョンドメインであると同定された。微細双晶は界面から2μmの厚み内にのみ存在していた。積層欠陥密度はSiCの成長とともに減少しており、Si基板表面のでこぼこが影響していると考えられる。SiC基板/SiCエビ層界面およびデバイスとして利用する際に問題となる最表面層の微細構造解析を行った。SiCエビ層内にもかなりの数の積層欠陥が観察された。
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