研究概要 |
超耐熱合金の基本となる"規則相が析出した二相組織"における相分離挙動を,透過型および走査型電子顕微鏡などにより調べ,次のような結果を得た。 1.Fe-Al-Ni合金のA2/B2二相組織を時効すると,B2析出粒子が相分離を起こしA2相が現れることがある。このB2析出粒子内のA2相粒子は,さらなる時効により,その形態を複雑に変化させる。このような形態変化と同時に,B2析出粒子およびA2相粒子の合金組成はいずれも変化する。 2.上記のようなA2/B2二相組織の更なる相分離現象は,bcc構造を基本とする他のFe基合金でも同様に生じる。また,Fe基合金以外のたとえばNi合金のγ/γ'二相組織でも同様の相分離現象が生じる。 3.計算状態図や組織変化のシミュレーションなど,熱力学、統計力学、ミクロ弾性論などに基づく解析により,二相組織の相分離現象を理論的に説明することができる。 4.この種の相分離現象の始まりは化学的自由エネルギーを駆動力としており,二相組織のもつ不安定性が顕著となる場合には,原子の拡散が許される限り,生じるものといえる。 5.相分離が始まり析出粒子中に新相粒子が一旦現れれば,その後の新相粒子の形態変化(二相組織の変化)には,弾性エネルギーの大小が大きく関与することになる。 6.ここで明らかとなった二相組織の相分離現象は"組織が本来有する不安定性を逆手にとって,組織変化を好ましい方向へと導く"という新しい考え方に基づいた"安定性に優れた耐熱合金開発"の可能性を示唆しているものと考えられる。
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