研究概要 |
平成19年度は,申請書記載の3つの要素技術に関し,以下の実績を挙げた。また,これまで開発してきた各要素技術を組み合わせ,4Dマテリアルサイエンスの新しいツールたる結晶粒界追跡法を開発し,金属材料に適用した。これは,これまでの手法では得られない結晶学的知見を4Dで得られる新規な先端可視化手法であり,本科研費課題の実施の集大成と言える。実際に,結晶粒毎の変形挙動を3D/4Dで可視化するとともに,結晶粒間の相互作用による不均質な変形挙動(局所的なひずみ分布)を可視化することができた。これは,従来は転位分布としてTEMにより薄膜でしか得られなかった知見であり,今後,このような手法が材料科学分野で活用され新しい知見を次々に生み出すことが期待される。 1)要素技術1-前年度に引き続き,吸収端差分法の高精度化,高機能化に資する実験をSpring-8で実施した。アルミニウム材料中のCu濃度の3Dマッピングのほか,時効析出能の3D評価,合金元素偏析の3D評価など,新しい試みにより前年度までに開発した技術を飛躍的に発展させることができた。 2)要素技術2-ミクロ組織特徴点の3D同時追跡による内部力学量のマッピング:亀裂先端の歪勾配の大きなところにも適用できるアルゴリズムの開発,変形破壊中に常に見えているミクロ構造の空間的配列をもとに,途中で消滅するミクロ構造の位置を,その消滅後も追跡し続けるアルゴリズム(RBF法)の開発などを行い,内部力学量マッピングの高精度化,高機能化,適用範囲拡大をさらに進めた。その結果,アルミニウム合金の局所的な亀裂進展駆動力のマッピング,金属材料の圧延プロセスにおけるミクロポアの消滅(ヒーリング)と再発生挙動を明らかにするなど,応用面での成果も顕著であった。 3)要素技術3-Local tomographyの開発: 引き続き,最適アルゴリズムの決定とその改良を行った。特に,計算の高速化のためにアルゴリズムの改良を行い,大きな効果が得られた。
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