バルク試料内部のミクロ組織のサブミクロン分解能での3D可視化、およびこれを用いた材料試験の"その場観察"は、超高分解能シンクロトロン放射光(以下、SR光)X線CTを用いた申請者らの試み(2001年〜)によって実現された。本研究ではこれ飛躍的に発展させ、高品質・高精度でInformation-richな3Dミクロ・ナノ組織画像の取得と高度な解析により、"4-Dimensional Material Science"を材料科学の広い領域で実現する先端可視定量評価手法を開発した。具体的な開発項目は下記の通り。 1)SR光X線CTの分解能をはるかに下回るナノ組織構造の可視化手法の開発 2)外乱下でミクロ組織特徴点(〜数万点)を追尾する内部局所力学量の3D高密度マッピング法開発 3)大きな観察対象の中のごく一部分のみを高分解能観察できる特殊撮像技術・アルゴリズムの開発 本研究で開発した手法は、従来の2D観察に基づく学問体系や研究・開発のプロセスを見直し、バルク材内部のミクロ構造の3D観察に基づき、ミクロ組織最適設計や複雑現象の解明にダイナミックかつ最短距離でアプローチするものである。Serial sectioningのような古典的アプローチを除けば、サブミクロン分解能のSR-X線CTを援用した本課題の開発手法は、唯一これを実現し得る手法である。これにより、材料科学の各分野で研究開発の効率と質において革新的な向上をもたらすと期待される。本研究課題で開発した手法の組み合わせにより、結晶粒を3D可視化してその変形中の形状変化を可視化したり、結晶粒界上、ないしは結晶粒内のひずみ分布を3D可視化するなど、これまでにできなかった結晶学的観察や可視化、定量評価が3D/4Dで行える、結晶粒界追跡技術も実現された。このような新しい手法群の活用による材料科学の学術的飛躍が大いに期待される。
|