研究課題/領域番号 |
17360342
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤本 愼司 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70199371)
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研究分担者 |
春名 匠 関西大学, 工学部, 講師 (70243186)
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キーワード | バイオマテリアル / チタン合金 / 生体適合性 / 不働態皮膜 / 再不働態化 / 皮膜破壊 / 急速ひずみ電極 / 模擬生体環境 |
研究概要 |
TiおよびTi-6Al-7Nb合金の表面皮膜が破壊された際の活性溶解とその修復過程である再不働態化過程を急速ひずみ電極法により解析した。水溶液環境として体液の無機イオンを模擬したHanks溶液、およびそれに必須アミノ酸、糖類等を添加したMinimum essential medium (MEM)およびMEMにウシ新生児血清を加えた培地を用いた。自然電位付近に定電位保持した試料に3.5%程度の引っ張りひずみを約0.7s^<-1>の急速なひずみ速度で与え、そのとき発生したアノード電流の変化を記録した。Tiでは塑性変形が開始するとともにアノード電流が急増し、ひずみ停止後電流は急速に減少した。一方、Ti-6Al-7Nb合金では塑性変形開始前の弾性変形の段階からアノード電流の増加が見られ、さらに塑性変形開始後に電流は急増した。表面皮膜は引っ張りと変形と下地金属の塑性変形に伴うすべりステップにより分断される場合がある。Tiの場合弾性限(降伏点)以下のひずみでは表面酸化物は破壊されず、塑性変形の開始とともにすべりステップ形成により新生面が出現する。一方、Ti-6Al-7Nb合金で生成する酸化物皮膜は合金化により変形能が損なわれたか、この合金を構成するβ相が特にな変形挙動を示し、降伏点以下でもわずかな塑性変形を生じたと思われる。 新生面上の溶解速度はTi-6Al-7Nb合金の方がやや大きい。また、血清の添加は溶解速度には特に影響を及ぼさなかった。一方、再不働態化、すなわち皮膜の修復過程には血清はTi-6Al-7Nb合金について阻害的に作用する。しかし、Tiについては特に影響を及ぼさなかった。 急速ひずみ電極挙動により、材料変形に伴う金属損傷におよぼす表面皮膜と表面改質の影響について検討することが出来た。
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