研究概要 |
本年度は細胞接着性に及ぼす電気化学的ポテンシャルの効果を検討した。基盤として白金および1mol/l H_2SO_4中で20V,30min.の分極によりアノード皮膜を生成した純Tiを半導体電極として用いた。L929マウス繊維芽細胞を6000個/cm^2の密度で播種し、直ちに所定の電位に分極し、24時間後に基盤に生存付着している細胞数を計数し、播種数に対する比率をもって接着率とした。これより、-0.6V_<Ag/AgCl>〜+0.2V_<Ag/AgCl>の範囲では接着率は一定であるのに対し、0.2V_<Ag/AgCl>以上では接着率は電位の貴化にともなって増加していることがわかる。一方、TiO_2上については細胞接着率はPtとくらべ低く、さらに電位依存性は認められなかった。Ptについて、培地のみで0および1Vにて24時間定電位分極した後の表面をXPSにて分析した。ここでは、C,O,N,Sを解析対象とした。0Vでは、C,Oのみ検出され、Cには化学シフトが認められず、ほぼ炭化水素のみが検出された。一方、1V分極の後では、Cはシフトなしとともに、酸素との一重および二重結合に相当するスペクトルが得られた。ただし、カルボキシル基は特に検出されなかった。さらに、Nが検出され、少量のアミノ基と蛋白質中のNの結合が認められ、それぞれアミノ酸ないしは蛋白質の末端と蛋白質の主鎖に相当すると考えられる。従って、1V_<Ag/AgCl>では蛋白質の吸着が生じ、その結果細胞接着因子となるタンパクが吸着して細胞接着が生じたと思われる。一方、TiO_2では蛋白質の吸着はPtと比べ少なく、細胞接着率と対応していることが分かった。
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