研究概要 |
本研究では以下の4つの機能に特化した形状記憶・超弾性合金の開発とそれに資する基礎研究を実施した. 1)加工性,成形性,繰り返し特性をも考慮した低温超弾性Ti-Ni-X系合金. 2)マルテンサイト時効やセラミックス粒子分散等の新しい組織制御法によって強化した高信頼性中/高温形状記憶・超弾性IVa(Ti,Zr,Hf)-貴金属(Pd,Pt,Au等)系合金. 3)高加工性医療用形状記憶・超弾性β-TiおよびZr系合金. 4)Ti-Ni合金の特性改善と同合金に匹敵する特性を持つ新規形状記憶合金. 目的1)ではNi過剰Ti-Ni合金で起こる多段階マルテンサイト変態の低温側の変態を利用した低温超弾性の創出を試みたが、目的とする機能の発現には至らなかった.しかしながら多段階変態に及ぼす熱処理条件、合金組成、母相結晶粒径等の材料学的諸因子の影響を系統的に明らかにした. 目的2)についてはTi-Pd合金のB2およびB19マルテンサイト相に存在する逆位相状界面の形態及び結晶学的特徴を高角環状暗視野および高分解能観察によって明らかにし、形成機構を考察した.さらにTi-Pt合金のBl9マルテンサイト相の内部欠陥(格子不変変形)の透過電顕観察を行ない、第I種、第II種および複合双晶を同定した. 目的3)ではTi-Mo-Sn合金に加工熱処理及び窒素添加を行なうことで様々な機械的性質(見かけの降伏応力、すなわち、マルテンサイト誘起応力)を持つNiフリー医療用形状記憶・超弾性β-Ti合金を開発し、用途に応じた合金の選択が可能にするとともに、低侵襲性医療器具であるガイドワイヤーへの応用を試みた. 目的4)については熱弾性マルテンサイト変態と優れた延性の発現するB2型Co-Zr-Ni合金に続いてCo-Zr-Pd合金を開発したが、形状記憶・超弾性特性はTi-Ni合金にはるかに及ばず、Ti-Ni合金の優れた特性を再確認する結果となった.
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