研究課題
基盤研究(B)
本研究では、組織情報の抽出解析を行い、計算機シミュレーションの援用などにより選択成長の対象となる結晶粒を選定し、それら結晶粒にレーザを照射することにより熱エネルギーを集中させて、設計した組織状態を得るためのシステムを構築し、実際に組織プログラムが可能であることを実証することを目的とした。この目的達成のため、直径数μm程度の領域にレーザ光をロックオン集光し、その領域のみを加熱する局所加熱システムを独自に設計・製作した。本システムでは試料を水平に設置した電動ステージ上に固定し、その試料表面に対して鉛直にレーザ光を集光・照射できるようになっており、さらにノマルスキー型プリズムを装備することで、システムが微分干渉顕微鏡として機能する。本機能により強度の腐食処理を行わずに結晶粒組織の確認ができる。また、レーザ照射位置を2次元走査できる機構を取り入れ、コンピュータ制御された電動で開閉する遮光板によってレーザ照射時間を任意に設定できる。冷間圧延した純アルミニウム板にレーザ局所加熱を施したところ、任意の位置に直径50〜100μm程度の再結晶領域を現出させることに世界で初めて成功した。さらに、再結晶処理を施した純アルミニウム板への照射実験では、照射位置を中心とする限定的な領域において優先的な粒成長現象を発現させることにも成功している。本実験と並行して実施したコンピュータシミュレーション実験では、再結晶状態で周囲の結晶粒よりも2倍程度の大きさに局所成長させた粒はその後の均一温度場での加熱により優先的に成長することが示され、その結果は本システムにより創出される特異な組織状態が多結晶組織の制御に新たな展開をもたらすことを示唆している。なお、純アルミニウム以外に、純チタン板についても実験を行い、プログラム上において実験者が指定した通りにレーザ光をチタン基板表面に集光・照射できることを実証した。
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