アルミニウム合金の表面硬化として、自己潤滑作用のある黒鉛が析出している鋳鉄皮膜をプラズマ溶射によって形成する。溶射プロセスでは、基材上で衝突した溶融スプラットの急冷を伴うため、黒鉛を析出した溶射皮膜の形成は難しい。したがって、予め黒鉛を含む焼鈍鋳鉄粉末を用いる。黒鉛は高温状態が続けば、溶鉄中に溶解するか、飛行中に酸化して消滅する。 本研究では、黒鉛のインプロセスにおける減少を抑えつつ、希望の黒鉛量を析出させた皮膜にすべく、飛行溶滴診断によって溶射プロセスコントロールを実現することを目的とする。 平成17年度に導入したプラズマ溶射装置及び既設の飛行溶滴診断装置により、溶射パラメータと飛行溶滴温度、速度との関係について以下の基本となる知見を得た: (1)溶射距離の増加とともに(60-140mm)、飛行溶滴温度は低下する (2)1次プラズマガス(アルゴン)の増加とともに(40-55 NLPM)、飛行溶滴温度と速度は上昇する (3)2次プラズマガス(水素)の添加量増加とともに(3.5-6.5 NLPM)、飛行溶滴温度は低下する (4)プラズマ電流の増加とともに(450-600 A)、飛行溶滴温度は低下し、速度は上昇する
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