研究概要 |
高炉プロセスの高速化・低温化に関する研究は、鉄鋼産業におけるエネルギー消費削減のために重要な役割を持っている。ここで、酸化鉄と固体炭素の反応の中には、炭材内装原料のように、非常に高速で、かつ低温から始まるメカニズムが存在することが分かっている。本研究では、その初期段階における反応を直接観察し、反応メカニズムと結晶方位関係を明らかにすることが目的である。 ヘマタイトの表面に炭素蒸着を施した後、赤外イメージ炉を有するレーザ顕微鏡を用いてAr雰囲気下1000℃で保持し、その還元の様子を直接観察した。実験は炭素蒸着をそれぞれ20nm,60nm,300nmと3段階に変えて行った。還元反応前後においてSEM, EBSP, EDS, XRD,ラマン分光分析などを用いて還元初期段階における試料表面の観察と分析を行い比較・検討した。 還元反応は、およそ650℃と低温からの開始が観察された。また、反応は高速で進行し、蒸着量が20nm,60nmの試料については反応開始から20〜30秒で炭素が無くなり反応が終了した。蒸着量を300nmと厚くした場合、還元反応によって酸化鉄・固体炭素界面で生成したCOガスにより蒸着した炭素層が大きく押し上げられることで接触が妨げられ反応効率は低下した。しかしながら、この押し上げられた炭素膜は、バブル状にCOガスを閉じこめており、中ではカップリング反応が進行しているものと考えられる。 300nm炭素蒸着試料の実験後のラマン分光分析結果から、表面に生成した組織はFe_3O_4であることがわかった。また、反応前後のSEM・EBSP観察結果から、反応後に各結晶粒内に観察されたFe_3O_4の針状組織は、母相の結晶方位と一定の関係を保って生成していることが分かった。
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