研究課題
電場を印加すると固化し、除去すると再び可逆的に流動化する流体をエレクトロレオロジー(ER)流体と呼ぶ。また、絶縁性液体に高電場を印加すると、流体内部に二次的な循環流が発生することがあり、これを電気流体力学(EHD)効果と呼ぶ。本研究は、この2つの現象を応用して、液体モーターやマイクロポンプなどソフトマシンを構築するために必要な新規流体デバイスの設計基盤を確立することにある。1.電場によるER流体の固化は基本的には粒子の誘電分極に起因するものであるが、粒子表面の導電状態も重要な要因となる。そこで、導電性付与のため、メソポーラスシリカに銅フタロシアニンをドープして、表面修飾によるER性能向上を試みた。その結果、細孔へのドーピングだけで顕著なER効果が発現することを明らかにした。これは機能分離型のER粒子を設計するための基盤となるものである。2.通常、ER流体の評価を行う場合、静止状態で電場を印加してから、せん断流動を与えるという手法をとる。しかし、多くのERデバイスでは、流動場にある流体に電場を印加して制御を行う構造となっている。したがって、流動中のER流体に電場を印加したときの応答性に関する知見が必要となる。針状粒子分散系のER効果について検討した結果、静置下より振動せん断下で電場を印加した方が顕著なER効果が発現することを見出した。針状粒子が形成する鎖構造の密度が流体力学的相互作用より増大したためと考えられる。3.絶縁性液体に直線の高電圧を印加すると、液体内部にジェット流が生じ、高速の循環流が発生することが知られているが、このジェット流を水中で発生させることに成功した。また、これを応用してインクジェットデバイスを試作した。水中においてノズル先端に高電圧を印加するだけで、ジェット下流が発生するので、ポンプやモーターなど新規流体デバイスに応用できると考えられる。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件) 産業財産権 (1件)
J.Soc.Rheol.Japan Vol.34, NO.1
ページ: 33-39