本研究は、申請者が独自に開発してきた金属ナノ粒子の組成や構造の制御技術を利用して所望の形態を有するカーボンナノチューブ(CNT)合成触媒の開発を目的とした。すなわち、構造制御したPdナノ粒子を核とし、Pdの無電解金属メッキ触媒性を利用してPdナノ粒子上に遷移金属(Ni、Co、Fe)を析出させたコア-シェル構造を有する二元金属ナノ粒子を活性種とする担持触媒を用いて多様な条件下でCNTの合成をおこない、生成したCNTの形状、構造、結晶性について詳細に検討した。得られた主な成果は以下の通りにまとめられる。 1.担体の種類によってCNTの生成量や形状が大きく変化した。例えば、シリカ-アルミナ担体では、アセチレン原料で多量のCNTが生成し、反応温度を600℃から700℃へ上昇させるとCNTの径は13nmから16nmへ若干増加した。MgOを担体に用いた場合には、触媒粒子間を連結するように非常に長いCNTの生成が認められた。電極間を連結させることができればデバイスへの展開が期待できる。 2.原料ガスの種類によって生成したCNTの形状に顕著な変化が観察された。原料ガスにアセチレンを用いると反応温度に拘わらず20nm程度のCNTが生成したが、エチレンでは、アセチレンに比べ太いCNTが生成し、温度の上昇によって太さも増加した。 3.CNTの炭素六角網面は、アセチレンでは軸方向と平行に発達したが、エチレンではアモルファスであった。エチレンでは、短い網面がCNTの中心に向かって斜めに向いた特殊な構造をした場合も認められた。これは、二元金属ナノ粒子触媒の遷移金属シェル部の構造を反映したものと推察される。 4.触媒の遷移金属の種類(Ni、Co、Fe)を変えても触媒特性に大きな差異は認められなかった。
|