研究概要 |
資源循環サイクルに組み込まれるバイオプラスチック生合成酵素の進化工学的改変をとおして、バイオポリエステルの生産性・物性を積極的に改善する研究を展開している。今年度は、3HBをベースとしたPHA共重合体を合成できるPseudomonas sp.61-3重合酵素(PhaC_<Ps>)を対象に、特に共重合組成(3HBとそれ以外のモノマーユニットとのモル比)と分子量の精密制御可能なPHAの合成進化酵素を多数創出し、それら構造機能相関解析から優良変異効果の総括的考察および、各種進化酵素の植物体での発現解析に移行した。 対象酵素PhaC_<Ps>は、3HBベースのPHA共重合体を合成できるが、3HB基質取り込み能力が微弱であるという課題があった。そこで、この性質を利用することによって、3HBだけから成るPHBホモポリマーの蓄積能力が向上する(Pha_<Ps>の3HBに対する基質特異性向上あるいは全活性の向上)ということを指標とした点変異導入と効率的なスクリーニング系を基盤とした新酵素創成システムを構築した。この確立した人工進化システムから得られた複数の優良変異部位4箇所(130,325,477,481)のうち、130番目と325番目は酵素活性そのもののに関与し、477番目と481番目は基質特異性に関与することが明らかとなった。この知見に基づき、組換え大腸菌(b酸化系変異株LS5218使用し、C4からC12までのモノマー基質を供給できる酵素遺伝子(phaA_<Re>B_<Re>J_<Pa>)を補強した状態)によって生成されるポリマーの解析から、優良変異の組み合わせから共重合体中の3HB分率が14%から93%の幅で制御できる進化酵素群を取り揃えることができた。また、477部位がGlyに置換が導入されると分子量が低下し、逆にArgに置換されると向上することがわかり、一アミノ酸置換で分子量制御も可能であった。 以上の結果は、側鎖のサイズを系統的に変えたCoA体脂肪酸モノマーを化学合成し、インビトロでの活性試験をした結果とよく符合し、生成ポリマーの解析結果とよい相関を示すことがわかった。これらの結果は、立体構造情報が無くてもPHA重合酵素の機能マッピングができることを始めて示すことができた。 さらに、代表的な進化酵素遺伝子をシロイヌナズナにモノマー供給酵素遺伝子群とともにアグロバクテリウム感染法で導入し、作出されたトランスジェニック植物を野生型酵素遺伝子株と比較したところ、期待どおりポリマー蓄積率が向上する成果を収めつつある。
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