研究概要 |
資源循環型バイオプラスチック生合成酵素の進化工学的改変により、バイオポリエステルの生産性・物性を積極的に改善する研究を展開してきた。最終年度は、ポリマーの共重合化におけるモノマー分率制御を精密に行ない、かつ分子量変化がダイナミックに実現する進化酵素を多数創出することを目的として、所期の水準に十分達した成果が得られた。 人工進化システムから得られた複数の優良変異部位4箇所(130,325,477,481)のうち、130番目と325番目は酵素活性そのもののに関与し、477番目と481番目は基質特異性に関与することが明らかとなった。この知見に基づき、組換え大腸菌(b酸化系変異株LS5218使用し、C4からC12までのモノマー基質を供給できる酵素遺伝子(phaA_<Re>B_<Re>J_<Pa>)を補強した状態)によって生成されるポリマーの解析から、優良変異の組み合わせから共重合体中の3HB分率が14%から93%の幅で制御できる進化酵素群を取り揃えることができた。さらに、これら優良部位における網羅的アミノ酸置換により、多くの相乗効果をもたらす組み合わせが同定でき、本手法の有効性が実証された。 以上の結果は、側鎖のサイズを系統的に変えたCoA体脂肪酸モノマーを化学合成し、インビトロでの活性試験をした結果とよく符合し、生成ポリマーの解析結果とよい相関を示すことがわかった。これらの結果は、立体構造情報が無くてもPHA重合酵素の機能マッピングができることを始めて示すことができた。 さらに、代表的な進化酵素遺伝子をシロイヌナズナにモノマー供給酵素遺伝子群とともにアグロバクテリウム感染法で導入し、作出されたトランスジェニック植物を野生型酵素遺伝子株と比較したところ、期待どおりポリマー蓄積率が向上する成果を収めつつある。
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