研究概要 |
本研究では,アルギニンおよびその誘導体が,新規な作用機序により蛋白質の可溶化・調製技術に極めて大きな貢献を果たし得る可能性の発見に基づいて,蛋白質の探索と応用,バイオ医薬品の開発競争等において,蛋白質の種類によらないハイスループットな蛋白質可溶化・調製の技術基盤の確立を目指している.今年度は以下の3つの観点から研究を進めた。 アルギニンとその誘導体の持つ蛋白質凝集抑制に関する作用機序の解明ならびに凝集体可溶化メカニズムへのアプローチ 新規な蛋白質可溶化・調製法確立への,アミノ酸とその誘導体導入の具体的展開をさらに強固なものとするために,以下の2つの観点から研究を進めた.1)密度計を用いた溶解度測定によるL-アルギニンと各種アミノ酸,ペプチド結合との親和性の測定を行った.2)超高度好熱菌由来蛋白質のL-アルギニン存在下における結晶構造解析を進めた. L-アルギニンとその誘導体を用いた蛋白質の可溶化 研究代表者らが保有している,多数の異なるフォールドを持つことが推測される可溶性蛋白質について,L-アルギニンを用いて発現した封入体の可溶化を試みた.L-アルギニンの除去については希釈法、透析法,ゲルろ過法,アフィニティーカラム吸着法を検討した. 各種Chromatograhyへの具体的展開:ゲルろ過(GPC),疎水的相互作用クロマトグラフィー(HIC),抗体を中心とした各種親和性クロマトグラフィー 各種クロマトグラフィーにおける展開溶媒としてのアルギニンとその誘導体の汎用性について,ピークのブロードニングの解消,会合体形成の抑制効果,について,本年度は,特にアルギニンが各種クロマトグラフィーにおける分離能向上に大きな貢献をすることを明らかにした.
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