研究概要 |
本年度は低分子の非競合的免疫測定系としてオステオカルシンペプチドとカビ毒ゼアラレノンのオープンサンドイッチ原理による測定に成功し,それぞれ第5回蛋自質科学会(上田宏,鈴木達也,後藤順一,小林典裕"オープンサンドイッチ免疫測定法によるオステオカルシンペプチドの非競合的検出")および第78回日本生化学会大会(鈴木達也,宗形百合子,守田和樹,篠田達也,上田宏"オープンサンドイッチ免疫測定法による内分泌撹乱性カビ毒ゼアラレノンの高感度検出")にて発表を行った。すなわちオープンサンドイッチ(OS)ELISAは抗体可変領域の抗原による安定化を利用した免疫測定法だが,これまで低分子ペプチドの検出を検討した例はなかったので,モデルペプチドとしてヒトオステオカルシン(BGP)のC末端12残基を,抗体として3種の特異的クローンを選びその検出を試みた。ハイブリドーマよりM13ファージp7,p9蛋白質を利用した提示系Split Fvシステムを利用してクローン化した3種の可変領域提示ファージはペプチド-BSAに対し十分な結合親和性を示し,うち一種がファージを用いたOS-ELISAにおいて顕著な抗原ペプチドおよびBGP依存的なVH/VL相互作用変化を示した。またその感度と測定濃度域は間接競合ファージELISAのそれの10倍以上であった。さらにVL断片をマルトース結合タンパク質との融合タンパク質として発現,マイクロプレートに固定化し,大腸菌アルカリフォスファターゼと融合発現させたVH断片を用いたOS-ELISAにおいてもほぼ同等の結果を得た。同様にゼアラレノン抗体についても競合法より優れた感度と測定濃度域を得ることが出来た。これらの結果はOS法が低分子の検出法としてかなり一般性のある方法であることを示している。またこのほか高活性な円順列変異体アルカリフォスファターゼの創製と,ホタルルシフェラーゼのN末ドメインを用いた新規な反応中間体の高感度検出法の開発に成功した。
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