研究概要 |
本年度は低分子の非競合的免疫測定系としてカビ毒ゼアラレノンとオステオカルシンC末ペプチドののオープンサンドイッチ原理による測定について,前者は論文発表を行い,後者についてはその特異性を確認すると共に熱レンズ顕微鏡とマイクロ流路を用いた検出系への応用を試みた。すなわちオープンサンドイッチ(OS)ELISAは抗体可変領域の抗原による安定化を利用した免疫測定法だが,これまで分子量1000以下の低分子ペプチドの検出を検討した例はなかったので,ヒトオステオカルシン(BGP)のC末端5-12残基を用いてその特異性を検討したところ,C末端を含む最低6残基(分子量約800)があれば検出が可能なことが判明した。また最高の検出能を示す7残基ペプチドをマイクロ流路を用いて検出した場合,マイクロプレートを用いたOS-ELISAとほぼ同じ量の抗原を10分程度の短時間で検出できた(本年度化学工学会年会にて発表)。また,食品中への残留が懸念されるネオニコチノイド系農薬イミダクロプリドおよびアセタミプリドについても,これらの抗体遺伝子クローニングとOS-ELISAによる検出に成功した。また,前者に対する抗体可変領域への変異導入により,よりイミダクロプリドへの特異性の高まった変異体を得ることにも成功した(生物工学会大会にて一部発表)。また,OS-ELISAを実施するために必須なVH・酵素融合タンパク質の調製法として,遺伝子レベルでの融合ではなく細胞レベルでのmRNAのトランススプライシング(TS)を用いた新規な抗体融合タンパク質作製法の開発を試み,モデル系としてCOS-1細胞中でTS由来と思われるRNAおよび蛋白質の検出に成功した(特許出願中,分子生物学会フォーラムおよび化学工学会年会にて発表)。今後,この原理を用いたハイブリドーマ細胞からの迅速な融合タンパク質取得をめざしたい。
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