研究概要 |
本研究の目的は「抗体可変領域(Fv)断片の抗原による安定化を利用した新原理免疫測定法(オープンサンドイッチ法,OS法)を利用して,低分子環境汚染物質の網羅的な高感度検出系を作製すること」にあった。このため,ネオニコチノイド農薬二種,カビ毒,低分子ペプチド(BGP-C7)の認識抗体Fv遺伝子クローニングを行い,ほぼ全てについてOS系の構築と抗原の非競合高感度検出に成功した。またペプチド検出系においてはマイクロチップ検出システムを用いて微量血清中での検出にも成功した。さらにこの過程で,OS法に適した抗体選抜のためのファージ提示法の最適化の重要性が明らかとなり,これまで開発したsplit Fv systemに加えて組換え酵素を利用したscFv-OS変換系,制限酵素切断によるFab-OS変換系などの精力的な開発を行い,後者においてはこれまで安定性の面で不可能だった10^8サイズの大規模ライブラリの構築と選択が可能になりつつある。このような状況のもと計画した無細胞選択系の構築までは至っていないが,近未来的により大規模かつOS法にfocusしたライブラリから本法に適したFvを高効率に選択できるようになり,これを環境汚染物質や蛋白質の低分子化学修飾や切断などの高感度な検出手段にできるものと考えている。また計画外の成果として,OS-ELISA実施に必須なVH-酵素融合タンパク質の調製のため,抗体産生細胞核内でのpre mRNAのトランススプライシング(TS)を用いた新規な抗体融合タンパク質作製法の開発を試み,モデル系としてCOS-1細胞中でTS由来RNAおよび蛋白質の検出に成功した。今後,この原理や他の原理による,遺伝子クローニングを要しないハイブリドーマ細胞からの迅速な融合タンパク質取得法の確立を目指したい。
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