トランスジェニックニワトリを組換えタンパク質生産のためのバイオリアクターとして用いるシステムを確立するために、鶏卵中に特異的に目的タンパク質を生産させるための発現システムの開発を目的とした。最終的には、卵白特異的な発現システムを構築する必要があるが、本研究で用いるようなレトロウイルスベクターでは、オボアルブミンプロモーターのように組織特異的な高発現を誘導するプロモーター領域全体を導入するには、ベクターへの挿入サイズ制限の関係上使用できないため、プロモーター領域をコンパクトにレトロウイルスベクターに組み込むため、組織特異的な発現に必要な最小領域と高発現誘導システムを合体させた合成プロモーターの開発を試みた。まず、オボアルブミンプロモーター領域をDNase感受性領域として既に報告があるものをもとに分割して発現ベクターに導入して組織特異的な発現に必要な領域の絞り込みを行った。この検討の過程で、既報のネガティブコントロール領域に転写調節因子YY1が結合することがわかった。構築した合成プロモーターシステムにおける転写活性化因子のポジティブフィードバックによる大量発現誘導について、培養細胞を用いて検討を行ったところ、高発現を誘導することが可能であったが、発現のリークによる増幅もおこっていることが判明し、発現リークを防ぐための合成プロモーターの改変が必要であることがわかった。これに対し、合成プロモーターに組み込まれたミニマムプロモーター配列をオボアルブミンプロモーターやコンアルブミンプロモーターのものと入れ替えたところ、オボアルブミンプロモーターで入れ替えたものでは、発現リークが最小限に抑えられることがわかった。これらの結果から、卵白特異的大量発現のための合成プロモーターの構成を決定することができた。
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