研究概要 |
1)フルオロ酢酸の炭素-フッ素結合を切断するフルオロ酢酸デハロゲナーゼの反応機構を解析した。種々の酵素-基質複合体の精密立体構造を解析し、活性部位のアミノ酸残基を同定するとともに、これらの残基と基質の相互作用を明らかにした。基質のカルボキシル基を認識するTrP150をAlaに改変した変異型酵素W150Aでは、クロロ酢酸に対する活性は保持されるが、フルオロ酢酸に対する活性が完全に消失した。W150Aによってクロロ酢酸を分解する反応系に高濃度のフルオロ酢酸を加えたが、フルオロ酢酸による拮抗阻害はみられず、Trp150の改変によって、フルオロ酢酸に対する酵素の親和性が著しく低下したことが示された。 2)嫌気的環境下に生息する細菌の中には、嫌気呼吸の最終電子受容体としてテトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物を利用し、これらを還元的に脱ハロゲンするものが存在する。この脱ハロゲン反応を触媒する酵素は、コリノイドと鉄-硫黄クラスターを有し、反応過程でラジカルを生成する。ラジカルの高い反応性を考慮すると、このファミリーの酵素に、強固な炭素-フッ素結合の切断を触媒するものが存在することが期待される。そこで、脱フッ素反応を触媒する新しい還元的脱ハロゲン酵素を得ることを目的として、フロンなど、種々の有機フッ素化合物を電子受容体として、嫌気性細菌のスクリーニングを行った。電子供与体として乳酸を用いた系で、特定フロンCFC-113(1,1,1-Trichloro-2,2,2-trifuoroethane)を電子受容体とする微生物を取得することができた。
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